物性セミナーのご案内


題目:強磁性‐反強磁性スピン鎖の相転移点及びその近傍における基底状態
講師:鈴木秀則氏(豊田工大)
場所:理学部1号館5F理論コロキウム室
日時:2月6日(金)14:00−15:30

概要
強磁性的な最近接相互作用(J1<0)と反強磁性的な次近接相互作用(J2>0)を持ち,隣接する3つのスピン間にフラストレーションが生じている一次元S=1/2スピン模型を考える.
この模型の基底状態は,J2/J1=-1/4を境に強磁性相と非磁性相に分かれる.この相転移点においてはRVB型の厳密な基底状態が求められていた[1].適当な開放端境界条件を課すと基底状態の縮重度が増大する.我々は,この縮退した基底状態のあらわな表式を書き下し,また,ボンド交替がある場合にも,系のサイズに対する漸化式から厳密な基底状態が構成できることを導いた[2].
さらに,相互作用のJ2/J1=-1/4からのずれ及び異方性を与えたときの強磁性相と非磁性相の境界について,基底エネルギーの変化に対するスケーリングを利用して議論する.
[1] T. Hamada et al., J. Phys. Soc. Jpn. 57 (1988) 1891.
[2] H. Suzuki and K. Takano, J. Phys. Soc. Jpn. 77 (2008) 113701.



題目:生命システムの物理 ― コンシステンシー原理による普遍法則探求 ―
講師:金子邦彦氏 (東大総合文化・ERATO複雑系生命)
日時:8月2日(木)14:40−16:10
場所:理学部3番教室


概要
生命システムは一般に、内部自由度を持った増殖する要素から成る。このような系の 安定性の要請により生命の普遍原理に迫れないだろうか?細胞状態のゆらぎやダイナ ミクスの測定技術の急速な進歩によって、こうした問いが机上の空論でなく議論でき るようになってきた。細胞の増殖、進化、適応に関する最近の研究を紹介する。具体 的には
・ 細胞複製系の状態の普遍統計法則
・ 遺伝子のゆらぎと表現型ゆらぎの関係、および進化における揺動応答関係
・ 増殖状態の示す自発的適応過程
について、理論と実験の両面から述べる。


題目:層状コバルト酸化物NaxCoO2の磁気的性質及び超伝導発現機構の理論的研究
講師:矢田圭司氏(名古屋大学工学部)
日時:5月17日(木)13:30
場所:理学部1号館5階 理論コロキウム室


概要
 Tc=4.5Kの超伝導物質であるNaxCoO2・yH2Oの超伝導機構の解明のため、我々はNaxCoO2のフェルミ面形状の特定し、電子-格子相互作用の正しい見積もりを行い、電子-格子相互作用に起因するs波超伝導機構の可能性について研究を行った。FLEX近似を用いた正常状態の研究によって、正常状態における擬ギャップ的振る舞いがバンド計算で示唆されている2種類のバンドからなるフェルミ面形状の場合には再現されず、ARPES実験で示唆された1種類のバンドのみでフェルミ面が構成されている場合にのみ再現可能なことから、NaxCoO2においてはARPESで示唆された大きなホールのフェルミ面が実現していると結論付けた。そのようなフェルミ面形状においてはフォノンを媒介としたs波超伝導が実現している可能性が高いことから、電子-格子相互作用を正しく見積もり、s波超伝導の転移温度の計算を行った。NaxCoO2においては光学フォノンの1種であるシアフォノンによってフェルミ準位近傍の軌道自由度を優位に利用することができ、クーパー対の軌道間遷移によってTcが上昇することがわかった(Suhl-Kondo機構)。上記のs波超伝導はCo3d電子系の強いクーロン斥力による対破壊効果を仮定してもTcが有限に残ることから、NaxCoO2においてはSuhl-Kondo機構によるs波超伝導が実現している可能性が高いと結論付けた。


題目:ハニカム格子上の量子スピン系における無秩序相
講師:高野健一氏(豊田工業大学)
日時:5月11日(金)14:00
場所:理学部1号館5階 理論コロキウム室


概要
 2次元量子スピン系では,2次元性による強い量子ゆらぎのため,古典系には対応する状態のない量子状態が起こりうる.以前より良く研究されてきたのは,フラストレーションのある正方格子における無秩序状態である.無秩序状態からのスピン励起は,ギャップを持っていることに特徴がある.一方で,正方格子における無秩序相は非常に狭いパラメータ領域でしか起こらないし,存在しないという意見も根強くある.また,適切な物質による実験もない.
 ここでは,ハニカム格子上の量子スピン系の無秩序状態を調べる.ハニカム格子では,もっと広いパラメータ領域で,無秩序相が存在する可能性がある.ハニカム格子上の量子スピン系の全体像をとらえるため,場の理論に変換する方法を考案し,これを用いて,基底状態の相図を求めた.この手法と,結果を述べる.
 ハニカム格子では,無秩序相が存在しやすいので,これを実現する物質も見つかる可能性が高まる.最近では,実験的な研究も盛んになってきている.